水乃さんのサヨナラインタビュー　2024/11/21

いつもの公演とは少し違った緊張感の中で、毎日舞台に立っていたが、無事に千秋楽を迎えることができた。皆さまの前でしっかりご挨拶できたことで、ようやくほっとした気持ちと感謝の思いが入り混じり、今は少し穏やかな気持ちでいる。

原作を観たとき、有働さんが演じるボニータさんの毒舌でカラッとした厳しさがとても印象的だった。その役割を自分のお芝居でもしっかり果たしたいと思いながら演じている。退団公演だが基本的に１人ということで、少し寂しさも感じつつ、責任を全うしつつ、自分なりのボニータ像を皆さまにお届けできればと思っている。髪型やアクセサリーなど細部にまでこだわりを詰め込み、娘役として積み上げてきたものを最後にしっかりとお見せできるよう、日々全力で挑んでいる。

宝塚らしさが詰まったショーで、振付のお稽古が始まった時から毎日ワクワクしていた。中詰めの譜面に、自分が踊る部分に『水乃グループ』と書かれている箇所があって、振付が始まる前から皆さんが楽しみにしてくださっているのを感じ、自分もどんな振り付けがくるのかと期待に胸を膨らませていた。いざ振付をいただいた時、百花先生が「パンチのある振りをつけた」と言ってくださり、その言葉通りの力強く魅力的な振りをいただけて本当に嬉しかった。周りを男役さんたちに囲まれながら踊るその瞬間がとても幸せで、全力で頑張っている。

紅さんが演じるカールの妹、ベティを演じた時、お芝居の中で初めて心が動いて涙を流す瞬間を経験した。自分がそんな特別な瞬間に立ち会えたこと、心が本当に動いたと感じられたことが、忘れられない出来事だった。この経験をきっかけに、人とお芝居をすることへの怖さを乗り越え、もっと頑張ろうと思えるようになった、大切な作品。

自分がいただいた役はもちろんだけど、作品そのものがとにかく大好き。プロローグで礼さん演じるディミトリが歌う曲が、最後にディミトリが命を落とした後、もう一度歌われる構成が本当に素晴らしくて、後ろで舞空が見守るシーンも含めて大好き。何度見ても心が揺さぶられ、涙を流してしまう。この作品に立ち会えたことが本当に嬉しくて、自分にとってまた一つのターニングポイントになった。

『エルベ～』の新人公演で極美さんの相手役を務めたとき、未熟さゆえに精一杯ついていくのがやっとで、心残りがずっと胸にあった。だからこそ、もう一度極美さんとしっかりお芝居ができる機会をいただけたことが、本当に嬉しかったし、今度こそ成長した姿を見せて最後までしっかりついていきたいと思えた作品だった。千秋楽の日、極美さんからいただいたメッセージの中で、「『エルベ～』のときに形にできなかったものが、少しでも形になったんじゃないかと思えて本当に嬉しかった」という言葉をいただき、その瞬間、さらに頑張ろうと心に誓った。

とにかく宝塚が、そして娘役という存在が大好きで、その気持ちだけを胸にがむしゃらに走り続けてきたなと思う。退団を控えたあるとき、大切な方から「努力は夢中に勝てない」という言葉をもらって、自分は本当に夢中でここまでやってきたんだと感じた。その瞬間、これまでの道のりに満たされるような充実感があふれてきた。こんなふうに今の自分があるのは、支えてくれた皆さまのおかげ。心から感謝の気持ちでいっぱい。